1度見ただけなのに何故か心に残り続ける映画というのがあります。
そうした映画の1つが、今回紹介する “Bloeistraat 11” という映画です。
【基本情報】Bloeistraat 11は「ストップモーションアニメ」
改めて紹介します。
“Bloeistraat 11″はNienke Deutz(ニンケ・ドゥーツ)監督によって2018年に公開された映画です。『花咲く道 11歳』という邦題もあります。
本作品の監督ニンケ・ドゥーツはオランダのロッテルダムを拠点に活動しています。
参考
- Nienke Deutz監督のホームページ
- Vimeo│Bloeistraat 11:Vimeoにて「Bloeistraat 11」本編が公開されています。
以下、Nienke Deutz監督の紹介です(翻訳は本記事執筆者)。
“Inseparable best friends spend their last summer holiday of childhood amusing themselves around the house. As summer progresses, their bodies start to morph and shift, and an awkwardness descends on their friendship. Puberty seems determined to interrupt their bond.”
(別れがたい大親友の2人は子ども時代の最後の夏休みを家の周りで過ごすことにした。
夏が進むにつれて、彼女たちの身体は移り変わり始め、友情に気まずさが降りかかる。
彼女たちの絆は思春期によって決定的にさえぎられるようである。)
そして、本作品の上映時間はたったの9分41秒という、10分にも満たない短編映画です。
映画のスタイルとしては、いわゆる「ストップモーション・アニメーション」。
物体を1コマずつ写真撮影し、それを繋げて動画のように見せています。
キャラクターはプラ板のようなもので表現され、キャラクターを取り囲む背景も平面的なもので構成されています。
キャラクターといっても3人しか登場せず、人物関係は至ってシンプル。
言葉を話さず、視聴者としてはキャラクターたちの動作のみで物語の展開を理解していきます。
参考:「第5回 新千歳空港 国際アニメーション映画祭」の紹介ページ(2022年5月23日アクセス)
Bloeistraat 11の魅力
ズバリこの短編にはどのような魅力があるのでしょうか?
次の点が最大の魅力だと言えます。
- キャラクター同士の心の結びつきを物理的・身体的な結びつきとして表しきっている
具体的に説明します。
そもそも、本作はタイトルがほのめかしているように、「思春期」をテーマとした映画です。
特に、思春期に差し掛かった2人の女の子の物語です。
登場する長髪の女の子は短髪の女の子よりも一足早く大人に。
なお、本作には言葉が出てこないことから、キャラクターに名前が付けられていません。
本作序盤ではこの2人の女の子は仲良く遊んでいます。
その証拠に、彼女たちがお互いに触れあった箇所が透けて、お互いの血管と血管とが結びつくような描写がなされています。
初見で見るとかなり生々しい表現で驚いてしまうことがあるかもしれません。
しかし中盤あたりから事態は変わっていきます。
長髪の女の子はもう1人のキャラクターである男の子を知り、大人の女性へと変化を遂げていきます。
そうした変貌を目の当たりにした短髪の女の子はきっと置いてけぼりにされたように感じたのでしょう。
場面が変わって再びこの2人の女の子が触れ合う場面では、もはや絆が結ばれることはないのでした。
最終的に、この2人の女の子は後戻りのできない別れを迎えてしまうことになります。
こうした映画の流れでずっと表されるのが、「心の結びつきの、物理的・身体的な結びつきとしての描写」です。
心の強い結びつきは、血管の結びつきとして描かれます。
プラ板に描かれたような簡素なキャラクターにも関わらず、妙に生々しい描写で思わず目を背けたくなるほどです。
思春期は心と身体の変化の大きい時期。
その本質を「心」と「身体」の両面で見事に描き切ったのが本作です。
【まとめ】Bloeistraat 11という意欲作
10分未満の作品ながらも物語としてきれいに完結しており、ハイクオリティな作品です。